被災地がれき  196



産経ニュース 2013.5.6 18:00

http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130506/waf13050618000013-n1.htm

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所詮は「人のカネ」の筋違い、震災復興「検討」だけで税金86億円を出す・環境省の“超・役人仕事”

【関西の議論】

東日本大震災で発生したがれきの受け入れを“検討”しただけで、ごみ処理施設の新設費など復興予算約86億円の交付を受けた堺市に対しては、いまだ批判の声が渦巻いている。だが、交付を決めた国側も、受け取る堺市側も「制度に則った交付。問題はない」と正当性を繰り返す。不正やインチキはなかったのだろう。しかし、復興は道半ばで、将来の生活が見通せない被災者が少なくない中、小さな自治体の年間予算並みの金が、復興とは直接関係のないところに投じられたことに納得いかない思いが残る。堺市は4月、復興を支援する基金創設を発表したが、「罪滅ぼしか」との揶揄(やゆ)も聞かれた。(中井美樹)

環境省の打診に驚愕

 「ホンマに大丈夫なのか、と不安に思った」

 ある堺市職員はこう打ち明ける。

 堺市にとって、ごみ処理建設は地元の重要課題。市は国に対し、平成24年度分の建設費などに交付金を出してもらえるよう要望活動を行っていた。もちろん、復興予算とは関係のない「通常枠」での要望だ。地方自治体として、国に交付金を求めるのはごく自然な動きでもあった。

 ところが、堺市の担当者は大阪府を通じて下りてきた環境省の打診に驚いた。復興予算から交付金を出したいというのだ。

 堺市のごみを処理する工場をつくるために、復興予算から金をもらういわれはない。当惑した堺市は「復興予算ではなく、通常枠で交付金をもらえないだろうか」と伝えたが、環境省からの返答は「通常枠の交付金を求める自治体が多く、要望が多くて予算額を大幅に超えている。何とか復旧・復興枠で切り替えてもらえないか」というものだった。

 震災がれきを受け入れるためのごみ処理工場をつくるので国からの交付金が出るというのであれば、まだ筋は通る。しかし、堺市は震災がれきを受け入れるか否かを決めていなかった。

堺市は半信半疑…国は大盤振る舞い

 がれきを受け入れないなら交付金を返せと言われても、返す余裕はない。堺市は2度にわたり「通常枠」で交付金をいただきたい、と返答していたという。

 それでも環境省が内示したのはやはり「復旧・復興枠」での交付金。しかも、内示に合わせて出された通知には「災害廃棄物の受入れの可能性がある施設の整備のための予算を計上。なお、受入条件の検討や被災地とのマッチングを実施したものの、結果として災害廃棄物を受け入れることができなかった場合でも、交付金の返還が生じるものではありません」とただし書きがあった。

 つまり、がれき処理を“検討”しただけで交付金を出します、ということだった。

 内示が出た後も堺市職員たちは半信半疑で、繰り返し環境省に確認の電話を入れたという。説明を聞いても不安になって、活字で残るようメールでも質問を送付し環境省の回答を求めた。それでも環境省の答えは「交付条件に該当する」だった。

 堺市は昨年5月、交付金を受けるため復興予算として正式に申請した。6月に、がれきの全体量が判明した結果、堺市が受け入れをしなくてもがれき処理は対応できるということになり、受け入れ先から除外されたが、交付手続きはそのまま進行。昨年10月に交付が決定した。

 さらに、この復興枠での交付は、地元負担分も総務省の復興予算で補うという大盤振る舞いの措置で、結果、復興予算から約86億円が交付され、堺市は当初計画していた通常枠の場合より、約23億円多くもらえることになった。

国に反対「ありえない」

 「3割自治」という言葉がある。地方自治体が総収入のうち自前の収入が3割程度しかなく、7割は国からの交付金などに依存しているということを示す言葉だ。実際の割合はともかく、国に対する地方自治体の立場が、いかに弱い立場であるかを意味している。

堺市でごみ処理場をつくるのであれば、本来は市民からの税金だけでつくればいいという考え方もある。だが、現実は国からの交付金なしでは、ゴミ処理場をつくることはできない。これは堺市だけでなく、全国の市町村が共通して抱える課題でもある。

 今回の交付について堺市の担当職員の1人は「復興枠という処置に不安はあったが、地方自治体が国の方針に反対することなどありえない。方針に従い、そのままの申請になった」と振り返る。

 一方、市町村や都道府県の役人たちの間では、さまざまな制度や仕組みを駆使し、国からの補助金や交付金をぶんどってこれる役人のことを「優秀だ」と評価する傾向もあるという。

 大阪府内のある自治体幹部も「今回の堺市では、結果的に86億円の国の予算を地元に引っ張ってきているわけですから、市のためにはよかったという発想もあるかもしれませんね」と話すほどだ。

 取材を進めても、環境省や堺市の判断に、不正は確認できなかった。

 しかし、震災復興のための金として想定されている“復興予算”が、復興と関係ない事業に使われてよいのか、という根本的な疑問は解決できていない。

 何度聞いても担当者たちは「制度上、問題ありません」と口をそろえるが、「制度自体がおかしいのではないか」という疑念を抱く。ただ、堺市民にとっては、地元のごみ処理場をつくることは確かに重要なことではある。

 しかし、86億円という巨額の金があれば、どれだけの施設を建て替えることができて、何人の被災者を雇用することができるのか。一連の動きは、そうした被災地への配慮を欠くものでもあるように思えるのだ。

堺市に批判殺到

 何かおかしい。その思いを決定づけたのは、今年2月25日の堺市議会でのやりとりだった。

ある市議が「(復興予算として受け取ることは)堺市にも道義的責任がある。国にお願いして、(復興予算ではない)一般財源に組み替えてもらうか、できないのであれば、堺市が負担しなければならない分に関しては、国に返還するか、被災地に義援金として送るべきだ」と提案した。しかし、竹山修身市長は「ありがたくいただきたい」と答えたのだ。

 竹山市長は「受け入れの可否を含めて堂々と検討してきた事実がある。事実を重ねるならば、これをいただくことは正当であると思っている」という。

 仮に交付を拒否する場合、堺市独自で工事費を捻出することは難しく、巨額の財源不足を生むことになるというのが市長の言い分だ。竹山市長は「財源確保は、首長としての責務。国の制度がきちっとなっていればいいのですが、そうなっていない以上、ありがたくいただきたい」と答え、市議の提案を「理想論」と切り捨てた。

 だが、「ありがたくいただきたい」という竹山市長の発言が批判を集めることになる。

 堺市へのメールや電話は市内外から600件を超えた。ほとんどは堺市を批判する内容で、その結果、担当課は「不正な交付ではない」と釈明に追われることになった。

 しかし、不信の元凶は「被災者不在の復興予算」にある。

 竹山市長はその後、3月13日の市議会委員会で「(復興予算は)被災地の復興に直接活用されるべきものである、という住民の声は重たい」と述べ、被災地に対し、何らかの支援策を行うことを表明。4月16日には、復興を支援する基金の創設を発表した。当面は、平成24年度の余剰金約5億円を充てるとした。

 基金創設を発表した会見の場で、「例の復興予算の罪滅ぼしか?」と報道陣から問われた竹山市長は「罪滅ぼしといわれると。ちょっと…」と苦笑し、「われわれは一般枠でお願いしていたのが、復興枠になったのでございまして、再度一般枠でお願いしたけど復興枠に戻っている。国の制度のひずみだと思っている」と指摘し、あくまで、堺市に責任はないことを強調した。

ただ、言葉の端々に被災地支援への意気込みを強調した。

 基金について「5億円で終わらせるつもりはない。具体的な方策が決まればそれに応じてさらに積むことも考えている。息の長い支援にしたい」と力を込めた。さらに、17~19日には、竹山市長は自ら岩手県大槌町など被災地を訪問。現状を視察するとともに、支援のニーズを聞き取りしてきたという。

 基金創設が、批判に対する“火消し策”なのか否か。本気度は、今後の堺市のひとつひとつの施策で判断できるだろう。


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